来年2020年1月から、インコタームズが改正されます。
こちら、貿易担当者は知っておくべき必須のテーマですが、クライアントに係る会計士の他、直接の担当でなくとも会社として業を行う場合、マネージャークラス以上の役職の方は一般常識として知っておくべき知識です。
セミナーは有料にもかかわらず、盛況のようです。
下記にセミナーなどに参加していない方でも理解できるよう、セミナーで説明された内容を、背景も踏まえてわかりやすく翻訳し、要旨を説明します。
インコタームズとは
インコタームズ(Incoterms)は、International Commercial Termsの略語です。
1900年過ぎ、貿易条件の足並みが定まらず、円滑な貿易取引が難しい状態でした。そこで1920年に創立された国際商業会議所(ICC)が貿易取引条件の明確化と共通化を目的に1936年に発表したものがインコタームズ1936です。
ICCはパリに本部がある民間国際組織で、127の加盟国を有し、自由貿易と国際投資を推進することを目的としています。
これは定期的に改正されますが、1980年以降は10年おきに改正されています。
インコタームズでは、商品受け渡しの責任範囲や運送・保険コストの取り決めが3文字のアルファベットを用いて規定されています。これは法的拘束力を持つものではありませんが、契約書に明記することで当事者間で有効となります。
インコタームズ2020の変更点
FCA条件にも積込済の付記を許容してもよい
船積前に、コンテナ積みされた物品が運送業者を通じて買主に引き渡される場合、通常FCA条件を使用すべきです。
しかしながら、FCA条件での引渡しは、船舶に物品を載せる以前に終了しています。売主は運送業者からon board notationのあるBLを受理できないため、銀行からこの呈示を必要とされる場合、問題がありました。
このためFCA条件であってもon board notationのあるBLが得られるように、下記要件を満たすことで、売主は銀行を通じて「積込済の付記のある船荷証券」を引き渡す義務を負うとすることができるとしました。
②買主が運送人に対してon board notationのあるBLを発行して売主に引き渡すように指示をすること
CIFとCIPとで、保険の補償範囲が異なることとなった。
CIF条件を使う場合は原材料が多く、CIP条件を使う場合は完成品が多いです。これまで、両社とも付保条件はICC(C)の最低限で良かったのですが、うちCIPについては、原則ICC(A)を要することとされました。但し、ICC(A)で良いと当事者同士が合意すれば、ICC(A)でも問題ありません。
DATからDPUへの変更とDATとDAPの順番変更
DATは、ターミナルで、売主が到着した運送手段から荷おろしをします。DAPは、指定された場所で、売主が到着した運送手段から荷おろしをしない状態で、買主に引き渡します。この点、通常荷おろしをしない、という選択肢の後に荷おろしをする整合性を踏まえ、インコタームズ2020ではDATとDAPの順番をひっくり返しました。
またDATをDPU (Delivered at Place Unloaded)に変更しました。DATのTはターミナルという意味ですが、実務上はターミナルのみならず、様々な場所が対象となることと整合性を合わせています。